最終更新日 2月 2023

クリーンルーム用ウェアの再利用と汚染リスク

最近の研究によると、再利用可能なクリーンルーム用ウェアのバクテリア飛沫捕集効率(BFE)は、洗濯や放射線照射を繰り返すことで著しく低下します。これは、無菌製造環境に対して、目に見えない汚染リスクをもたらします。



再利用可能なクリーンルーム用ウェアがもたらす汚染リスク

医薬品製造において、製造工程の汚染は相当なコストとなります。クリーンルームでの汚染ほど深刻な事象はありません。汚染が発生すると、高額な費用のかかるシャットダウンや生産コストの増加、さらにはリコールや死亡につながる可能性もあります。

人は、クリーンルームにおける粒子汚染の最大の原因で、全粒子汚染の46%を占めます。人は一日中、何百万もの粒子を排出し、拡散します。皮膚片、皮脂、汗、毛髪などの身体の再生プロセスは、すべてクリーンルーム汚染の原因となります。

人がいるところには、微生物汚染のリスクがあります。 

このリスクは、バクテリアや酵母などの生物粒子や、毛髪、古い角質、フケなどの非生物粒子から環境を守る滅菌クリーンルームウェアを使用することで軽減できます。そのため、クリーンルームの作業者は、最高レベルの汚染コントロールを実現するウェアを選択することが不可欠です。

正しいタイプのウェアを選ぶことが最も重要です。しかし、ウェア自体がクリーンルーム環境に悪影響をおよぼすとしたらどうでしょうか?Kimberly-Clark Professional™のテストでは、再利用可能な防護服のバリア性は、洗濯、乾燥、滅菌のサイクルを何度も繰り返すと低下することが分かりました。このバリア性の低下は、クリーンルームにとって重大な汚染リスクとなります。 
クリーンルーム用ウェア
クリーンルーム用ウェアは、大きく分けてシングルユースの使い捨てウェアと、洗濯して再利用できるウェアの2種類があります。 

シングルユースウェア

シングルユースのウェアは、2種類の生地で作られています。1)サブミクロンサイズの粒子や微生物の捕集効率が高く、非危険物の軽度の飛沫に適したフラッシュスパンポリエチレン生地と、2)外層に強度と布のような快適さをもたらすスパンボンドポリプロピレンを、中間層に粒子や液体に対する強力なバリアとなるマイクロファイバーのマトリックスを採用したSMS(スパンボンド+メルトブローン+スパンボンド)生地です。 

再利用可能ウェア

再利用可能なクリーンルーム用ウェアは、一般的にポリエステル混紡の生地で作られていますが、何度も洗濯や滅菌を繰り返すうちに劣化することがあります。Kimberly-Clark Professional™が実施したテストでは、お客様である製薬会社から無作為に抽出したウェアを使用しました。テストの結果、平均5回の洗濯後にバクテリア飛沫捕集効率(BFE)が25%以上低下していました。これは、無菌製造環境に対して、目に見えない汚染リスクをもたらします。1

試験で分かったこと:  
  • テストを行った着用済みの再利用可能な滅菌ウェアの100%が、洗濯後にBFEの低下を示しました。
  • 再利用可能ウェアの捕集効率は通常70%以下でした。 
  • 生地の劣化はサブミクロンレベルで見ることができ、これは細菌が素材を貫通するのに十分なレベルでした。ウェアは予想以上に急速に劣化し、洗濯を繰り返すなかで劣化し続けました。 
  • 再利用可能なクリーンルーム用ウェアの総所有コストは、予測よりも大幅に高くなりました。 
  • 平均洗濯回数は予想よりも大幅に少ないものでした。

追加テストの結果

Kimberly-Clark Professional™は、使い捨てと再利用可能なクリーンルーム用ウェアの比較試験を行いました。テスト方法は、再利用可能ウェアの生地サンプルを容器にかぶせ、別の容器にKimberly-Clark Professional™使い捨てウェアの生地サンプルをかぶせるというものでした。2 これらの容器には、黄色ブドウ球菌をエアロゾル化したものを噴霧しました。24時間後に生地サンプルを外し、細菌のコロニー形成単位数をカウントして、試験媒体に浸透した細菌の数を測定しました。結果: 

  • 使い捨てウェアの生地は、95%のBFEを維持していました。  
  • 再利用可能ウェアの生地は、68%のBFEでした。

その他の懸念事項

再利用可能なクリーンルーム用ウェアの洗濯プロセスには、選別、複数の洗濯サイクル、乾燥、冷却、検査などの複数の処理工程があり、これらすべてが生地にさらなるストレスを与えます。これはウェアの手入れをするたびに繰り返されます。そのため、洗濯工程自体が細菌の通り道になってしまうのです。再利用可能ウェアのBFEに関するテストデータは、一般的に、複数回洗濯・殺菌した場合ではなく、新品のウェアに基づいています。ウェアの捕集効率と寿命は、実際に使用されているものとは一致しないようです。 

シングルユースウェアのメリット

使い捨てウェアには、再利用可能ウェアに比べて以下のようなメリットがあります。 

  • 予測可能性 – 個々のウェアの最適で予測可能な性能を保証するために、一度洗濯されます。
  • データの透明性 – 使い捨てウェアに関するデータをご用意しています。
  • 着用のしやすさ - 再利用可能ウェアとは異なり、使い捨てウェアには、着用時にウェアが床に触れないような革新的な機能を備えたものがあります。
  • 快適性 – Kimberly-Clark Professional™のSMS生地は涼しく、通気性に優れています。
  • リサイクルのしやすさ – RightCycleプログラムを通じて、クリーンルームで使用される使い捨てウェアをリサイクルすることができます。これは、新しいクリーンルーム廃棄物に対する初の大規模なリサイクル活動です。廃棄物を削減し、クリーンルームの持続可能なウェアソリューションを保証します。RightCycleプログラムは、Kimberly-Clark Professional™の従来はリサイクルが難しかったニトリル手袋やシングルユースウェアを、耐久消費財に変えるプログラムです。
  • 安定した性能 – シングルユースウェアは、最高レベルの無菌状態を確実に維持する性能と一貫性を備えています。
  • 真空密閉 – これにより無菌状態を確保しています。

結論

今回のテスト結果は、再利用可能な防護服の有効性と信頼性、および洗濯後のクリーンルーム基準への適合性に疑問を投げかけるものでした。テストしたすべての再利用可能な滅菌防護服は、洗濯後にバクテリア飛沫捕集効率(BFE)の低下が見られました。対照的に、使い捨てウェアは一度洗濯し、各ウェアに最適で予測可能な性能を保証しています。 
無菌製造環境用にウェアを選ぶ際には、最高レベルのBFEを提供するクリーンルーム用ウェアを選ぶことが重要です。お客様には、このような研究結果を考慮して、使い捨ての滅菌ウェアを選択することをお勧めします。

1 ASTM F2101-14 黄色ブドウ球菌のバイオエアロゾルを用いた医療用フェイスマスク材料のバクテリア飛沫捕集効率(BFE)評価の標準試験方法
2 Kimtech* A5の生地